http://www.kinokuniya.co.jp/label/20110512104656.html http://mag.kawade.co.jp/sekaibungaku/ http://mainichi.jp/enta/book/news/20110703ddm015040060000c.html この全集、実は1冊も読んでいないのだけれど、生の池澤夏樹さんのお話を聞きたくて。しかし知っている作品がほとんどない。それに新訳がいっぱい。こんな斬新なことができるって、いまの日本も捨てたもんじゃないなぁと思った。 作品を選ぶにあたって、ボトムアップで入れていって束ねてみたら、「辺境」「移動」「女性」「植民地」といった傾向が後になって見えてきた、というのはおもしろかった。「こうあるべき」が先にある今までのヨーロッパ中心の文学全集の逆。先にお題を出すんじゃなくてね。仕事とかでつい上のヴィジョンを求めちゃったりするけれど、こんなやり方もある。 池澤さんは「世界文学」全集を作りたかったんだって。世界文学って、翻訳してもその価値が失われないもの、逆に翻訳によって価値が与えられていくもの。 柴田元幸さんが言っていたけど、シェイクスピアをやるのに、イギリス人はずっとシェイクスピアの言葉でやらなきゃいけないから、どんどん翻訳で新しくしていける日本人のような立場はうらやましいものなんだって。確かにね。 いろいろ気になる本があったのだけれど、覚えているのはレスコフの「魅せられた旅人」。 http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/32/X/3263910.html 会場からの質問がとても印象に残ってる。17歳の男の子が今何を読んでおけばいいか聞いていた。鴻巣さんはカラマーゾフをあげていたけど、私は読まずにここまで来てしまった。受験勉強から逃げるように、でも急き立てられるようにして読んだのは、ガルシア・マルケスの「百年の孤独」。青い表紙で2段組みだった。最後、頁を繰りたくなくて、でも物語と重なるように、ばさばさと紙の音がして本が閉じられる、その音をたしかに聞いた。 池澤さんの「マシアス・ギリの失脚」は「百年の孤独」をベースにしているそうだけれど、やっぱり原作に届かない部分があるんだって。それはカトリックの闇の深さ。魂の光と闇の深さがぬるい日本人には届かなくて、限界があるのだそうだ。 http://www.amazon.co.jp/dp/4101318158/ 東大の男子学生が、居心地の悪さを感じていても退学する勇気がなくて・・・と話していた。池澤さんは中退しているから聞いてみたかったんだろう。中退していまやり直しの私だけど、退学してしまえ、なんて言えない。何度でもやり直せることは確かだけれど、私もそうとうに苦しんだから。最後はうつ病になって、それでも週1回のギリシャ語だけは通った。そのうち生きる頼り綱のようになった。震災直後に思い出したのは、アエネイスだったけど。 http://nabocha.exblog.jp/14422631/ このイベント、震災で一度中止になったものだったらしい。最後に質問した女性が、石牟礼道子さんの「苦界浄土」が震災と重なり、涙したと言っていた。 http://www.amazon.co.jp/dp/4309709680 池澤さんはもちろん震災を予期して入れたわけじゃないけれど、大江健三郎や村上春樹を入れたのでは日本語作品を入れるための言い訳のようになってしまう、ただ石牟礼さんの作品は入れなければいけない、と直感したとのこと。 池澤さんは震災の後、シンボルスカの詩が頭から離れなくて、沼野訳ということも忘れて、自分の中に入り込んでしまったと言っていた。 「またやって来たからといって/春を恨んだりはしない/例年のように自分の義務を/果たしているからといって/春を責めたりはしない」 http://www.impala.jp/3.11/ シンボルスカの詩集、工藤幸雄さんが訳したものをずいぶん前に古本で買った記憶がある。今度実家に帰ったら探してみよう。 http://www.t3.rim.or.jp/~shoshi-y/cgi-bin/bookinfo.cgi?id=199707413&ids=ll 最近自分と真摯に向き合う読書をしていないな、とつくづく思う夜だった。せっかく今度北海道行くんだから、「静かな大地」を読んでみようかしら。 http://www.amazon.co.jp/dp/4022578734/ http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1746133539&owner_id=831795
by nabocha
| 2011-07-01 05:25
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